この記事はこんな人向け
- JX金属(5016)をこれから買うか迷っている
- 「AI・半導体関連で、日本株を持ちたい」と思っている
- でも資源株っぽいリスクもありそうで怖い
- 中長期(3〜5年)で育てる銘柄を探している
「煽り」抜きで、良いところとダメなところを両方書きます。
ぐうたらネコJX金属の株価ってIPO後かなり上がったよね
あいひー2000円ちょっとになったところで私は売っちゃった。また買い戻そうか悩んでる
1. JX金属ってどんな会社?
1-1. ざっくり一言でいうと
“銅・レアメタル×半導体材料”のハイブリッド企業
- 半導体向けスパッタリングターゲット(薄膜をつくる材料)
- ロール銅箔・チタン銅・電磁波シールド材など通信向け材料
- 電解銅・貴金属・硫酸などのベーシックな金属素材
…といった事業を持つ、「素材のど真ん中+先端材料」な会社です。
1-2. 3つの事業セグメント
公式の説明をかみ砕くと、だいたいこんなイメージです:
- 半導体材料
- スパッタリングターゲット(半導体やディスプレイ用の薄膜材料)
- 化合物半導体・結晶材料 など
→ AIサーバー/高性能チップが増えるほど恩恵を受ける部分
- 情報通信材料
- ロール銅箔、チタン銅
- 超微細ニッケル粉末、電磁波シールドフィルム など
→ 5G・データセンター・自動車の電装化などのテーマと連動
- ベーシックマテリアル(基礎素材)
- 電解銅、銅製品、貴金属、硫酸…など
→ 従来の“資源・非鉄金属”の世界
- 電解銅、銅製品、貴金属、硫酸…など
2. 長期ビジョン:2040年までに営業利益2.5倍へ
JX金属は、2040年に営業利益2,500億円を目標に掲げています。
足元は「営業利益1,000億円レベル → 2040年に2.5倍」を狙うイメージ。
ポイントは:
- 「高収益・高成長のフォーカス事業」=先端材料が成長エンジン
- 銅製錬などのベーシック事業は“最適化”(縮小も視野)
- M&A や提携も使って、半導体・情報通信向けの比率を高めていく方針
つまり会社自ら、
「昔ながらの『銅を精錬して売る会社』から、
『半導体・通信向けの技術素材企業』へ変身したい」
と宣言して動いている状態です。
3. 足元の業績と株価水準
3-1. 最新決算(26年3月期・第2四半期)
- 2025年4〜9月の連結最終利益:429億円(前年同期比+16.9%)
- 通期最終利益予想:700億円 → 790億円に上方修正(+12.9%)
- 前期最終利益:682億円 → 今期は約15.7%増の見通し
→ きちんと“増益+上方修正”が出ている優等生決算。
一方で、
- 直近四半期(7〜9月)の売上営業利益率は
26.4% → 19.7%へ低下(利益率は少し細っている)
といった気になる点もあります。
3-2. 株価指標(2025年11月14日時点)
Yahoo!ファイナンスベースで:
- 株価:およそ1,700円前後
- 時価総額:約1.6兆円
- 予想PER:約20倍
- PBR:約2.5倍
- 予想EPS:85.22円
- 予想配当:21円(利回り 約1.2%)
→ 「ド安いバリュー株」ではなく、
**“成長期待込みでそこそこ評価されている中大型株”**というポジションです。
4. 成長ドライバー(ポジティブ要因)
4-1. 半導体材料:AIブームの“裏側で儲かる”
- JX金属は、半導体製造に必須の「スパッタリングターゲット」などで世界的なプレーヤー。
- AIサーバー需要・データセンター投資が増えるほど、高性能チップの生産拡大 → 材料需要も伸びやすい。
- アリゾナなど海外の製造拠点増設も進めており、北米需要を取りにいく動きも報じられています。
「NVIDIAが売れる → TSMCが忙しくなる → 材料メーカーにも仕事が来る」
その材料メーカーの一角がJX金属、という構図ですね。
4-2. 情報通信・電動化の波
ロール銅箔・高機能銅合金・電磁波シールド材など、
5G・データセンター・EVなどの**“電機・通信インフラの増加”とセットで伸びる製品**も多く抱えています。
「半導体だけ」ではなく、
“電気が流れてデータが動くところの裏側”はだいたい関わっている
と言っても大げさではないポジション。
4-3. リサイクル・グリーンハイブリッド
ここ数か月のニュースで大きかったのが「リサイクル投資強化」。
- 低品位の電子ごみなどリサイクル原料の前処理能力を2027年度までに50%増強するため、約70億円投資。
- 銅精錬を「濃縮銅精鉱」依存から、リサイクル原料を増やす“グリーンハイブリッド製錬”へ転換し、
収益性と環境対応を両立させたい方針。
これによって、
- 銅精錬マージンの悪化(TC/RC下落)のダメージを軽減
- レアメタル・貴金属回収の付加価値を高める
- 半導体材料向けの供給安定にもつながる
といった“じわっと効いてくる強み”が期待できます。
5. リスク・ネガティブ要因
いい話だけ書くと危ないので、
「ここが怖い」というポイントもはっきり書きます。
5-1. 銅・非鉄市況に左右される
- JX金属は「半導体材料の会社」として語られがちですが、
依然として銅製錬・ベーシックマテリアルの比重も大きいです。 - 世界的に銅精錬のマージン(TC/RC)が低下しており、
利益が圧迫される構造が続いていると社長自らコメントしています。
→ 銅市況・中国の需給状況・世界景気に業績が振られやすい側面は残ります。
5-2. 収益性はまだ「発展途上」
- 最新決算では増益・上方修正が出た一方、
直近四半期の売上営業利益率は 26% → 20%弱まで低下。 - 半導体・情報通信材料へのシフトを進めつつも、
まだ「旧来事業の重さ」を引きずっている印象は否めません。
“めちゃくちゃ高収益の超ハイテク企業”というより、
「そこそこ儲かる素材企業が、技術寄りに変身中」くらいのイメージが現実的です。
5-3. 親会社(ENEOS)による売出し・需給リスク
- 2025年に実施されたIPOは、ENEOSによる保有株売却が中心で、
日本で2018年以来の大型案件と言われました。 - 親会社が依然として大株主であり、
今後も売出しが出る可能性=株価の上値を抑える要因になり得ます。
6. バリュエーションと“妙味”
6-1. 指標からみる立ち位置
- PER 約20倍
- PBR 約2.5倍
- 配当利回り 約1.2%
今の日本株市場でいうと:
- 「超割安なバリュー株」ではない
- かといって「PER40倍のグロース」ほど高くもない
- “成長期待込みでそれなりに評価されている素材+先端材料株”
という位置づけです。
6-2. 個人的に感じる“おいしさ”
- **長期ビジョン:営業利益2.5倍(2040年)**が、もし半分でも実現すれば、
今の株価水準は「そこまで高いとは言えない」可能性があります。 - 半導体・通信インフラ・リサイクルといった、
長期トレンドに乗るテーマを複数持っているのも強い。
一方で、
- 市況悪化・親会社売出し・期待先行の反動などで、
中期的には株価がヨコヨコ〜調整も十分あり得る - 配当利回りは高くないので、「インカム狙い」には向かない
このあたりをどう捉えるかがポイントです。
7. JX金属はどんな投資家に向いている?
向いている人
- AI・半導体・電動化などの長期テーマに乗りたい
- でも、完全なハイテク銘柄(装置・設計)ほどのボラは怖い
- 「素材×先端材料」という**“中庸ポジション”がちょうど良い**
- 3〜5年スパンで、じっくり成長を待てる
向いていない人
- 1年以内に“2倍株”を狙いたい
- 配当利回り4〜5%の高配当株が好き
- 資源市況やマクロ環境を気にしたくない
- 「銘柄数は少数精鋭で、超集中投資したい」タイプ
8. 買う前にチェックしたいポイント(チェックリスト)
JX金属を買うか迷っている人向けに、
最後に5つのチェック項目を置いておきます。
- 半導体・AI関連の需要トレンド
- NVIDIA・TSMC・世界の半導体投資が減速していないか?
- 銅・非鉄市況
- 銅価格やTC/RCの水準はどうか?
- 日本の製錬業の収益環境は悪化していないか?
- JX金属の決算トレンド
- 連続して“増益+上方修正”が続いているか?
- 営業利益率が改善方向か、悪化していないか?
- 親会社の売出し動向
- ENEOSの持株比率・追加売出しの有無をニュースで確認できているか?
- 自分のポートフォリオとの相性
- すでに素材・資源株ばかり持っていないか?
- 半導体・成長株とのバランスは取れているか?
9. まとめ:JX金属は「変身中の素材企業」
最後に一言でまとめると、
JX金属は、「旧来の銅屋さん」から「先端素材カンパニー」に本気で変身しようとしている途中の銘柄。
- 業績:増益+上方修正で、足元は悪くない
- ビジョン:2040年に営業利益2.5倍を目指す明確なストーリー
- テーマ:半導体・通信・リサイクルという長期テーマを複数持つ
- ただし:資源市況・親会社売出し・利益率などのリスクも共存
“一発ドカン”ではなく、“変身を一緒に見守るタイプ”の投資ができる人に向いている銘柄だと思います。


